抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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生物起源の炭酸カルシウムは顕生代の環境復元に広く用いられてきた。近年,表面電離型あるいは誘導結合プラズマ質量分析計によりCa及びMg安定同位体組成の高精度分析が可能となった。そこで,その同位体分別が古海洋環境に関して従来の古環境指標を補う情報をもたらすことが期待される。また海洋のCa及びMg同位体比は,大陸の風化や中央海嶺拡大速度などに支配される元素循環の変化も反映している。本論文では,炭酸カルシウムの生成過程におけるCaとMgの同位体分別効果を,無機的沈殿と生物殻の沈殿の相違に焦点を当て,地球化学的な意義とともに紹介する。反応素過程である海水からの炭酸塩生成時の同位体分別と,地球表層の低温での化学反応に伴う同位体分別機構の解明が重要である。Ca同位体に関しては,有孔虫,円石藻,造礁サンゴ,腕足動物のそれぞれの同位体分別に関する知見とその古環境指標としての評価を記述する。Mg同位体に関しては陸域の指標としての鍾乳石を紹介し,有孔虫,造礁サンゴ,円石藻の生物学的効果や深海サンゴ及び大型底生有孔虫の高Mg方解石の同位体分別を議論する。炭酸塩の生成時の同位体分別効果や生物学的効果に関しては,新たなデータの発表による活発な議論が今も続いており,同位体比の測定精度及び感度の向上や室内実験に基づく同位体効果の理論における進展が期待される。