抄録/ポイント:
抄録/ポイント
文献の概要を数百字程度の日本語でまとめたものです。
部分表示の続きは、JDreamⅢ(有料)でご覧頂けます。
J-GLOBALでは書誌(タイトル、著者名等)登載から半年以上経過後に表示されますが、医療系文献の場合はMyJ-GLOBALでのログインが必要です。
航空機や宇宙機の設計で必要な高レイノルズ数流れの乱流境界層における剥離や遷移,再付着,熱輸送といった現象を正確に予測するには,壁面近傍の微細な渦構造の解析が必要となる。近年,LES(Large-eddy simulation)法は乱流解析の有効な手段と評価されている。しかし工学的応用対象の多くが高レイノルズ数(Re≧10<sup>6</sup>)であるに関わらず,壁境界を持つ現実的な高レイノルズ数流れへLES適用は,計算資源の制約という大きな課題を伴う。壁面近傍の問題解決は内層域の直接解像無しのモデル化を不可欠とする。LESにおける内層域モデルとして,壁面摩擦応力を直接モデル化するKawai&Larson法があるが,本稿では近年のKawai&Larsonの研究成果を基にこのモデルの適用範囲を遷移や剥離を伴う流れへ拡張を検討した。Kawai&Larsonの平衡および非平衡モデルの双方において新たに乱流遷移の取扱いを提案した。A-Airfoil周りの高レイノルズ数(Re<sub>c</sub>=2.1×10<sup>6</sup>)亜音速流れをLESに適用した。対象とする流れ場は負圧側で層流剥離,乱流遷移,乱流再付着,乱流剥離,といった複雑な現象を含んでいる。得られた結果を実験および壁面近傍を解像するLESのデータと比較し壁面モデルのLESへの適用可能性を検討した。結論として次を得た。1)対流項および圧力項の効果を考慮した非平衡モデルを用いたLESは,上流の層流剥離,乱流遷移,乱流再付着,乱流境界層の発達,乱流統計量,等を精度良く予測した。また,層流剥離によってスパン方向の二次的な渦が放出され,それらの逆圧力勾配による不安定性崩壊後,微細乱流渦へ遷移し,流れが再付着する,という一連の物理現象として捉えることができた。2)対流項および圧力項の効果を考慮していない平衡モデルではこれら一連の物理現象を捉えることができなかった。3)本研究のレイノルズ数領域(Re<sub>c</sub>=2.1×10<sup>6</sup>)において,壁面モデルを用いたLESは境界層の内層領域まで解像するLESに比べて100倍近くのオーダで計算コストを低減できた。