抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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プレートの沈み込み帯にあたる糸魚川-静岡構造線南部とその東域,および中央構造線(鹿塩)地域に分布する塩化物泉の主成分および酸素・水素・硫黄安定同位体分析を実施するとともに,公表論文等による分析値を加えて地質鉱物,鉱床学的視点で温泉の成因を検討した。温泉は塩化物泉(Na-Cl)を主とするほか,塩化物泉(Ca-Cl),炭酸塩泉(Na-HCO
3,Ca-HCO
3),硫酸塩泉(Na-SO
4,Ca-SO
4,Mg-SO
4,Fe-SO
4)からなる。このうち,糸魚川-静岡構造線南部とその東域に分布する炭酸塩泉と硫酸塩泉(Fe-SO
4を除く)は降水起源水が石膏・硬石膏の溶解,火山性物質のNa-スメクタイト化,イオン交換反応を経験して形成されたものであり,石膏・硬石膏の溶解量が両泉質の支配要因になっている。また,酸性Fe-SO
4泉は黄鉄鉱の酸化作用を受けて形成されたと推察される。両地域の塩化物泉は高塩分流体と降水起源水の混合流体からなり,高塩分流体を起源とする高塩化物泉のMg
2+,SO
42-濃度およびδD値は現海水より低い一方,Ca
2+濃度は高い。両地域の高塩分流体は,1)糸魚川-静岡構造線南部とその東域,および中央構造線(鹿塩)地域に火山性塊状硫化物鉱床(それぞれ含金黒鉱型,別子型)が分布する,2)高塩化物泉で微量のCu
2+とZn
2+が検出される,3)高塩化物泉の水質特性が黒鉱鉱化流体(糸魚川-静岡構造線南部とその東域が該当)および現世の火山性塊状硫化物鉱床形成の場である海底熱水に似ていることを勘案すると,火山性塊状硫化物鉱床を形成させた鉱化流体(含マグマ起源流体)を起源にしていると推察される。すなわち,海底堆積物の埋没過程で海底火山活動に伴う鉱化流体が泥質堆積物の間隙に閉じ込められた後,付加体の形成時に絞り出されて両構造線の断層系に高塩分流体として貯留されたと考えられる。この間およびその後に,両地域では硫酸還元反応,方解石セメント化,火山性物質のMg-スメクタイト化,Na-スメクタイトの陽イオン交換反応によるMg-スメクタイト化,スメクタイトのイライト化,火山性物質のNa-スメクタイト化を経験したNa-HCO
3型降水起源水による希釈が進行した結果,塩化物泉の水質組成が決定されたと推察される。(著者抄録)