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J-GLOBAL ID:201702268698173119   整理番号:17A0083270

変形原子核の巨大単極共鳴

Giant Monopole Resonance in Deformed Nuclei
著者 (2件):
資料名:
巻: 72  号:ページ: 45-49  発行年: 2017年01月05日 
JST資料番号: F0221A  ISSN: 0029-0181  CODEN: NBGSA  資料種別: 逐次刊行物 (A)
記事区分: 解説  発行国: 日本 (JPN)  言語: 日本語 (JA)
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原子核中の核子は,他の核子との相互作用によって自己無撞着に形成される一体場中を運動し殻構造を作り出す。核子の一粒子運動状態は,特に奇数個の核子数をもつ原子核の基底状態あるいは低励起状態に見られる。分子の変形(ヤーン・テラー効果)に類似して,フェルミ面近傍に一粒子状態の近似的縮退がある場合には,回転対称性を自発的に破ることで系のエネルギーを下げ,変形状態が発現する。また一方で,原子核には,多数の核子の運動がコヒーレントに関与した集団運動が現れる。その代表例は巨大共鳴と呼ばれる振動励起モードである。中性子群と陽子群が逆位相で振動するアイソベクトル型巨大双極共鳴は,光(ガンマ線)吸収断面積の系統的な測定によって,アルファ原子核からウラン原子核まで普遍的に現れることが確立している。巨大四重極共鳴は,1970年代に東北大などでの電子非弾性散乱によって初めて観測され,のちに陽子やアルファ粒子の非弾性散乱などで次々と測定されている。一方,巨大単極共鳴は,測定の困難さから,信頼できる結果が出始めたのは90年代になってからである。巨大単極共鳴は圧縮型の振動励起モードであり,天体物理への応用として核物質の非圧縮率の決定のため,球形原子核を中心に測定されてきた。希土類原子核は,中性子数の変化とともに球形から変形へと変容することが知られている。そこで,サマリウム同位体を典型例として,巨大共鳴に対する変形効果が実験的および理論的に議論されてきた。巨大単極共鳴は変形の発達に伴い,元の共鳴エネルギーより低いエネルギー領域に新たなピーク構造が現れることが観測された。原子核の一粒子運動・集団運動を統一的に記述できるとされる原子核密度汎関数理論(DFT)の最近の発展で,変形原子核の巨大共鳴状態が微視的に計算できるようになり,2ピーク構造の表れは変形効果であることが定量的にも示された。しかし,質量数の小さな原子核の中で特に大きく変形している24Mg核においては,理論計算では同様に二つの共鳴ピークが現れることが予言されたものの,テキサス農工大の実験では観測されなかった。実験の設定の問題により観測できなかったのか,あるいは軽い原子核では,巨大単極共鳴の発現機構が重い原子核とは異なるのか分からなかった。もし後者であれば,現在の理論枠組みを超えた新しい枠組みとメカニズムが必要となる。そこで,大阪大学核物理研究センター(RCNP)において,24Mg核に対するアルファ粒子非弾性散乱実験が遂行され,鉛やサマリウムなどの重い原子核の実験で培われた高分解能・低バックグラウンドの測定手法により,二つの共鳴ピークが存在することが初めて発見された。これにより,変形原子核の巨大単極共鳴は2ピーク構造をもち,それは理論計算の分析から巨大四重極共鳴との結合効果によるものであるとの理解が確立した。本研究の成果は,原子核DFTが核子の自由度から出発して,原子核の集団運動,特に線型応答を定量的に議論できるものであることを示したことである。今後,この理論は未知の原子核における新奇な集団励起モードを探求する際の大きな指針を与えてくれるものと期待できる。また,阪大RCNPの加速器・測定器は,核子ダイナミクスの性質を詳らかにしてくれる強力な装置であることが示され,今後も,原子核が見せる多様で多彩な励起モードの性質の解明において世界をリードしていくものと期待できる。(著者抄録)
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核物質  ,  原子核の一般的性質 
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