抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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本研究では,中部地方の里山においてダケカンバパッチの林分構造を調査し,広葉樹二次林におけるダケカンバ林の動態について考察した。木材コアの年輪測定結果から,本調査地はおよそ100年前の人為伐採によって成立したことが判明した。山頂に近い風衝地に設定された試験区では,本数密度比に占めるダケカンバ萌芽幹とミズナラ萌芽幹の割合がほぼ等しいことから,人為伐採が行われる以前からダケカンバがミズナラと共に優占していたことが推察された。一方,斜面上に設定された試験区では,本数密度比に占めるダケカンバ萌芽幹の割合がミズナラ萌芽幹の割合よりも小さく,人為伐採が行われる以前はミズナラが優占していたことが推察された。単幹が実生によって更新した個体と仮定すると,ダケカンバは風衝地の試験区では実生と萌芽によって更新し,斜面上に設定された試験区では主に実生によって更新したと考えられた。斜面上の試験区のダケカンバは小径の個体を欠いていたことから,今後林分発達が進行するにしたがって本数密度が徐々に低下し,やがてもとのミズナラが優占する林分へと移行することが予想された。一方,風衝地の試験区では強風による樹幹の折損によって萌芽幹の発生がこれまで繰り返されてきた可能性が高く,現在の個体群を今後も長期にわたって維持していくことが予想された。里山の広葉樹二次林においても風衝地に成立するダケカンバパッチは,森林限界に分布するダケカンバ帯と同様に,萌芽による後継樹の供給によって個体群を長期間にわたって維持できると考えられた。(著者抄録)