抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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2018年9月6日に北海道東胆振の深さ37kmでM6.7の地震が発生した。この地震は震度7または6+で,多数の地滑りを発生させた。これらの数は20km×20kmの地域で10,000回にもなる。これらは主に基盤のテフラ層上の岩屑滑りであったが,岩石滑りや落石も震央付近で発生した。黒ボク土に挟まれた厚いテフラ層が,これらの地滑りが発生した地域の斜面を覆っている。テフラ層は,厚真町の西約50kmにある支笏カルデラとその周辺の火山に由来している。斜面に見られる主なテフラ層は,支笏カルデラのSpfa1軽石(42ka),恵庭火山のEn-a軽石(20ka),樽前火山のTa-d軽石(9ka)である。調査地域の北部ではEn-a層が厚く約100cm以上,南部ではTa-d層が厚く約50cm以上。これらのテフラ層はこの地震による地滑りの主要な要素であった。凍結-融解サイクルによって引き起こされたソリフラクションの影響を受けた斜面の表層堆積物は,最終氷期(~10ka前)の間に活発に移動した。その結果として,谷頭凹地と表面の堆積物が堆積した斜面の麓,または頂上の斜面を除き,Spfa1とEn-aは斜面に留まることができなかった。しかし,斜面の下部は,後氷期の温暖で湿潤な気候に関連した河川活動の増加により侵食された。したがって,最終氷期に堆積したSpfa1とEn-aは,下部谷側斜面を覆わないが,Ta-dは風化岩上の斜面堆積物を覆っている。したがって,この地域では,ほとんどの斜面はTa-dで覆われている。傾斜面のEn-a被覆,例えば谷頭凹地は,再活動したSpfa1によって覆われている。滑り面は,En-aの下のガラス質Spfa1と混合した下部火山性土壌であった。Spfa1を含む火山性土壌は高い保水性を持ち,滑りやすい。ただし,Ta-dは谷側の斜面上で再活動したEn-aによりしばしば覆われている。これらの再活動したテフラと,高い保水性を有するTa-d層の下部ユニットは,この地震の滑り層になったであろう。滑り面の一部は,Ta-d層の最下部に水分を多く含む細かい軽石層で形成されていた。水を多く含む細かい軽石は,斜面に縞模様を付けて滑り面に付着することがよくある。被災地の南部では,急な部分を除くほとんどの斜面がTa-dの厚い層で覆われている。地震による地滑りの主な原因は,この厚いTa-dであった。そのため,Ta-d層が厚い斜面で多くの地すべりが発生した。対照的に,被災地北部ではTa-d層が薄いため,地滑りは稀であった。一方,谷頭凹地における厚いEn-aの地滑りは,不均等に分布していた。(翻訳著者抄録)