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新規用途開発に有用なアイデア発想の効率化を目指す
新製品の開発に画期的なアイデアが欲しい、あるいは、既存の製品や材料などを新たな用途に使って新規ビジネスを作りたい――。こうした時にその成否の鍵となるのは「アイデアの発想」である。
「これまでアイデア発想を支援する多くの提案・検討がなされてきましたが、今なお主流となりうるような、効率的なアイデア発想の支援方法は見当たりません」と高橋氏は語る。
高橋氏は情報科学技術協会(INFOSTA)の研究会である日本オンライン情報検索ユーザー会(OUG)の特許分科会に15年以上、インターネット/ビジネス分科会に10年以上所属し、特許情報やビジネス情報、Web情報などの検索・解析処理に関する多くの研究を行ってきた。近年は特に、インターネット/ビジネス分科会において新規用途開発のためのアイデア創造、つまり、効率的なアイデア発想の方法の研究に取り組んでいる。
アイデア創造技法はさまざまな方式と種類があり、それらの一部はすでに実用化もされているが、アイデア発想の効率が良いとは言い難い面があり、また、必要とされるアイデアが確実に得られるかは不確実であるなどといった課題があった。
そこで高橋氏はインターネット/ビジネス分科会において、J.W.ヤングの『アイデアのつくり方』の5段階からなるプロセスの一部にアイデア発想支援システムの適用を想定して、アイデア発想への効用を探索することとした。『アイデアのつくり方』で紹介されている原理と方法(5段階法)の考え方は、多くの当該分野の人々に支持され、アイデア発想法の古典となっているものだ(図1)。
「アイデアのつくり方の5段階法の中で、第1ステップとなる資料(データ)の収集、第2ステップの資料(データ)の咀嚼という部分にアイデア発想支援システムを適用することで、新規用途開発に有用なアイデア発想を効率化し、かつアイデア発想の不確実さを低減できるプロセスを開発し、他社が容易に追従し得ない画期的なアイデア創造ができないかという探索を行いました」と高橋氏は語る。
アイデア発想のためのキーワード検索には多面性が不可欠
高橋氏はいくつかのアイデア発想に有望そうな情報システムを比較、検討した。その結果、「アイデア発想に適した多分野にわたる収録情報、情報間のリンク、追加解析による可視化などが優れていて、アイデア発想が容易となりそうな品質の優れた情報が得られる」という点を評価して、(独)科学技術振興機構(以下JST)が提供するWebサービス「J-GLOBAL(科学技術総合リンクセンター)」を適用することと決めた。
「単純にキーワードを入れて検索するというツールでは今回の探索の役には立たないだろうと想定しました。J-GLOBALは資料対象を選択的に選ぶことができ、さらにこの結果を絞り込み検索することができます。つまり、項目ごとに観点が異なる結果を得ることができます。この観点の違いを次のアイデアの咀嚼というステップに生かすことができるのです」と高橋氏。
アイデア発想支援システムへJ-GLOBALを採用することで、特許情報も技術文献情報も同じ検索式で同時に収集できるため、第1段階の情報収集の効率化を図ることが可能となる。さらに、高橋氏は絞り込み検索結果(ランキング)をExcelで可視化するという独自の工夫を加え、単なる記号と件数のデータ羅列を分類の概念上で個々の項目の多少や傾向が把握できる有意なデータに変換することを可能とした。これにより追加解析や第2段階である情報の咀嚼にも大いに効果がある。
高橋氏はJ-GLOBALについて「アイデア発想に不可欠なキーワードに多面性(同義、類似、反語など)があるというのが今回の適用で重要な意味を持っています。J-GLOBALでは大規模辞書やシソーラスmap、研究者などの豊富な辞書が活用できます。このようにしっかりとした辞書を持っていることは非常に価値があります。多様で、多面的、多観点なファセットを用意することができます」と語る。
今回の探索の結果について、「アイデアを作るために第1、第2ステップで実施する事項の大半をJ-GLOBALで実現できるので、同ステップの機械化によって、アイデア発想の効率化とアイデア発想の確実さが増すと言えます。J-GLOBALは科学技術関連の情報が豊富で専門的な文献や特許に強い特色があります」と高橋氏は言う。アイデア発想の重要なステップである「資料の収集」「資料の咀嚼」のステップに、発想の支援に優れた特徴を有するJ-GLOBALを適用したアイデア発想支援システムによりアイデア発想への効用が大きいことが推測できた。
中小企業の研究開発者の味方にJ-GLOBALのさらなるオープン化を期待
今回の探索のみならず、今後についてもJ-GLOBALをさまざまな形で利用していきたいと高橋氏は言う。「すでに公開されているJ-GLOBALの有用な機能を現時点ですべて活用できているかは分かりません。今後はさらに、さまざまな利用を介してリテラシーを向上させていきたいですね」と今後の展望を話す。
加えて、「J-GLOBALのもっとも優れた点は、すべてではありませんが“無料”で利用できるというところです。多くの中小企業は情報予算を持っていません。研究開発者は常に技術情報や特許情報を得ることに苦労しています。そういう人たちを救える道をJ-GLOBALが拓いてくれるのではないかと考えています」と高橋氏はJ-GLOBALへの期待を語る。J-GLOBALには源報が読める文献が多数あるため、素早くその情報の核心を把握することができるのも嬉しいと付け加えた。
近年はデータマイニングなどの技術が進歩し、技術全体の俯瞰が容易にできる環境が整いつつある。しかし、これは中小企業ではコストなどの面からも容易には利用できない。また、「アンダーザテーブル」と言われる、机の下でこっそりと研究開発者個人が進めるコアコンピタンス外の研究開発などには当然予算も付かず、コストの掛かる情報収集を行うことはできない。J-GLOBALのオープン化(無料公開)がさらに強化されていけば、予算が無い、あるいはアンダーザテーブルな研究開発を行いたいという研究開発者の利用が広がり、情報循環が加速されるのではないかと高橋氏は期待する。
「特に中小企業の研究開発者の中では、J-GLOBALはまだあまり知られていないという部分もあると思います。使ってみないと分からないという面もあって、利用してみればかなり有効な使い道もあるはずです」(高橋氏)
[2014年3月]
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新規用途開発に有用なアイデア発想の効率化を目指す
新製品の開発に画期的なアイデアが欲しい、あるいは、既存の製品や材料などを新たな用途に使って新規ビジネスを作りたい――。こうした時にその成否の鍵となるのは「アイデアの発想」である。
「これまでアイデア発想を支援する多くの提案・検討がなされてきましたが、今なお主流となりうるような、効率的なアイデア発想の支援方法は見当たりません」と高橋氏は語る。
高橋氏は情報科学技術協会(INFOSTA)の研究会である日本オンライン情報検索ユーザー会(OUG)の特許分科会に15年以上、インターネット/ビジネス分科会に10年以上所属し、特許情報やビジネス情報、Web情報などの検索・解析処理に関する多くの研究を行ってきた。近年は特に、インターネット/ビジネス分科会において新規用途開発のためのアイデア創造、つまり、効率的なアイデア発想の方法の研究に取り組んでいる。
アイデア創造技法はさまざまな方式と種類があり、それらの一部はすでに実用化もされているが、アイデア発想の効率が良いとは言い難い面があり、また、必要とされるアイデアが確実に得られるかは不確実であるなどといった課題があった。
そこで高橋氏はインターネット/ビジネス分科会において、J.W.ヤングの『アイデアのつくり方』の5段階からなるプロセスの一部にアイデア発想支援システムの適用を想定して、アイデア発想への効用を探索することとした。『アイデアのつくり方』で紹介されている原理と方法(5段階法)の考え方は、多くの当該分野の人々に支持され、アイデア発想法の古典となっているものだ(図1)。
「アイデアのつくり方の5段階法の中で、第1ステップとなる資料(データ)の収集、第2ステップの資料(データ)の咀嚼という部分にアイデア発想支援システムを適用することで、新規用途開発に有用なアイデア発想を効率化し、かつアイデア発想の不確実さを低減できるプロセスを開発し、他社が容易に追従し得ない画期的なアイデア創造ができないかという探索を行いました」と高橋氏は語る。
アイデア発想のためのキーワード検索には多面性が不可欠
高橋氏はいくつかのアイデア発想に有望そうな情報システムを比較、検討した。その結果、「アイデア発想に適した多分野にわたる収録情報、情報間のリンク、追加解析による可視化などが優れていて、アイデア発想が容易となりそうな品質の優れた情報が得られる」という点を評価して、(独)科学技術振興機構(以下JST)が提供するWebサービス「J-GLOBAL(科学技術総合リンクセンター)」を適用することと決めた。
「単純にキーワードを入れて検索するというツールでは今回の探索の役には立たないだろうと想定しました。J-GLOBALは資料対象を選択的に選ぶことができ、さらにこの結果を絞り込み検索することができます。つまり、項目ごとに観点が異なる結果を得ることができます。この観点の違いを次のアイデアの咀嚼というステップに生かすことができるのです」と高橋氏。
アイデア発想支援システムへJ-GLOBALを採用することで、特許情報も技術文献情報も同じ検索式で同時に収集できるため、第1段階の情報収集の効率化を図ることが可能となる。さらに、高橋氏は絞り込み検索結果(ランキング)をExcelで可視化するという独自の工夫を加え、単なる記号と件数のデータ羅列を分類の概念上で個々の項目の多少や傾向が把握できる有意なデータに変換することを可能とした。これにより追加解析や第2段階である情報の咀嚼にも大いに効果がある。
高橋氏はJ-GLOBALについて「アイデア発想に不可欠なキーワードに多面性(同義、類似、反語など)があるというのが今回の適用で重要な意味を持っています。J-GLOBALでは大規模辞書やシソーラスmap、研究者などの豊富な辞書が活用できます。このようにしっかりとした辞書を持っていることは非常に価値があります。多様で、多面的、多観点なファセットを用意することができます」と語る。
今回の探索の結果について、「アイデアを作るために第1、第2ステップで実施する事項の大半をJ-GLOBALで実現できるので、同ステップの機械化によって、アイデア発想の効率化とアイデア発想の確実さが増すと言えます。J-GLOBALは科学技術関連の情報が豊富で専門的な文献や特許に強い特色があります」と高橋氏は言う。アイデア発想の重要なステップである「資料の収集」「資料の咀嚼」のステップに、発想の支援に優れた特徴を有するJ-GLOBALを適用したアイデア発想支援システムによりアイデア発想への効用が大きいことが推測できた。
中小企業の研究開発者の味方にJ-GLOBALのさらなるオープン化を期待
今回の探索のみならず、今後についてもJ-GLOBALをさまざまな形で利用していきたいと高橋氏は言う。「すでに公開されているJ-GLOBALの有用な機能を現時点ですべて活用できているかは分かりません。今後はさらに、さまざまな利用を介してリテラシーを向上させていきたいですね」と今後の展望を話す。
加えて、「J-GLOBALのもっとも優れた点は、すべてではありませんが“無料”で利用できるというところです。多くの中小企業は情報予算を持っていません。研究開発者は常に技術情報や特許情報を得ることに苦労しています。そういう人たちを救える道をJ-GLOBALが拓いてくれるのではないかと考えています」と高橋氏はJ-GLOBALへの期待を語る。J-GLOBALには源報が読める文献が多数あるため、素早くその情報の核心を把握することができるのも嬉しいと付け加えた。
近年はデータマイニングなどの技術が進歩し、技術全体の俯瞰が容易にできる環境が整いつつある。しかし、これは中小企業ではコストなどの面からも容易には利用できない。また、「アンダーザテーブル」と言われる、机の下でこっそりと研究開発者個人が進めるコアコンピタンス外の研究開発などには当然予算も付かず、コストの掛かる情報収集を行うことはできない。J-GLOBALのオープン化(無料公開)がさらに強化されていけば、予算が無い、あるいはアンダーザテーブルな研究開発を行いたいという研究開発者の利用が広がり、情報循環が加速されるのではないかと高橋氏は期待する。
「特に中小企業の研究開発者の中では、J-GLOBALはまだあまり知られていないという部分もあると思います。使ってみないと分からないという面もあって、利用してみればかなり有効な使い道もあるはずです」(高橋氏)
[2014年3月]
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