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日本最大級の研究者探索サイト 国内の大学・研究所の20万人を網羅
企業の技術者や研究者が新たなビジネスのタネになる研究テーマなどを探す際に、インターネットを利用するケースが増えている。ネット上には国内外の科学技術に関する有益な情報サービス(研究者情報や文献情報、特許情報など)が数多く存在している。しかし、専門分野のデータベースサービスなどをよく利用する人でも、自分の専門分野以外の有益な情報は知らないことが少なくない。一方で、専門サービスをあまり使わない人は、科学技術情報を探す時にも、「Google」や「Yahoo!」といったネット上の検索サービスを利用することが多いようだ。
こうした状況のなか、ネット上の科学技術情報の探索手段として注目されているのが、2009年3月30日にJSTが運営を開始した「J-GLOBAL」である。J-GLOBALは、研究者や文献、特許、研究課題など9種類の基本情報を登載しており、これらの基本情報を相互につなげるだけでなく、外部のWebサイトとも連携している。特に、研究者情報については国内の大学・研究所に所属する約20万人に及ぶ情報が登録されていることから、J-GLOBALは日本最大級の研究者探索サイトといえる。
「ネット上には膨大な科学技術情報が存在しているので、本当に必要な情報を一般の検索エンジンで探すのは苦労します。そして一般の検索エンジンでは、発表された論文など過去の情報は検索できますが、未来の情報は探せません。私の仕事は、未来の動向を読者に伝えることです。J-GLOBALは国内の研究者の情報が充実しており、取材先などを調べるのに非常に便利だと思います」──。日経BP社 医療局 主任編集委員の宮田満氏は、J-GLOBALの使用感をこのように話す。
宮田氏は現在、約5万人が登録する会員制のe-Mailニュース配信サービス「BTJ/HEADLINE/NEWSメール」や、より深掘りした情報を掲載する紙媒体の「日経バイオテク」などで、国内外のバイオテクノロジーに関連する最新情報を、企業や研究機関、大学などの研究者に向けて発信している。また、バイオ関連の最新情報を網羅したWeb媒体の「Biotechnology Japan」(BTJ)では、1996年の創刊から現在までWebマスターを務めるなど、名実ともにバイオ分野における第一線のジャーナリストである。
その宮田氏は取材先や取材テーマなどを探す時に、米国国立医学図書館の医学・生物文献データベース「PubMed」や、米Google社が提供する学術論文検索エンジン「Google Scholar」などのほか、日本の特許庁のデータベースを利用する機会が多いという。さらに、「約5万人の研究者が登録されているBTJ/HEADLINE/NEWSメールでのやり取りから、最新情報を入手することも少なくありません」と述べる。
研究者や文献・特許などの関連情報を簡単にたどれる類似検索
J-GLOBALに搭載されている9種類の基本情報には、約20万人の研究者情報のほかに、約1600万件の文献情報、約650万件の特許情報、約6万テーマの研究課題、約18万語の科学技術用語、約280万件の化学物質などがある(図1)。これらの基本情報が相互につながっているため、表示された情報のリンクを次々にクリックするだけで関連する情報を簡単に入手できる。
また、JSTが運営する文献検索サービス「JDreamII」や独立行政法人 工業所有権情報研修館が運営する特許電子図書館「IPDL」のほか、「Wikipedia」や宮田氏がよく利用する「PubMed」などのサイトにもリンクしている。例えば、無料のJ-GLOBALを利用して研究課題を選定し、有料の専門データベースを用いて課題解決の情報を入手するといった使い方も可能だ。
こうした情報の連携について宮田氏は、「J-GLOBALは特に、国内の研究者を調べる仕組みがうまくできていると思います。この人と人をつなぐネットワークから、新たなイノベーションが生まれる可能性があります」と話す。例えば、宮田氏が関心を寄せる「微生物電池」のキーワードで検索すると、関連する国内の主な研究者の一覧が表示された。「私が知っている研究者は、すべて含まれていました。的確な情報入手に活用できそうです」(宮田氏)という。
また宮田氏は、新たな取材テーマを思いついた時に関連する文献を探したり、文献を読んでその原本を探したりすることも多いという。「そうした時に便利なのが、J-GLOBALの類似検索機能です。類似する研究者や文献、特許、研究課題などを芋づる式に検索でき、関連情報を調べられます」と、使い勝手の良さを説明する。類似の研究課題の中には重要な情報が含まれることもあり、類似検索で情報入手の幅を広げることができると見ている。
異分野のキーワードを組み合わせて「ひらめき」の手がかりに
海外の検索エンジンやデータベースと比べたJ-GLOBALの利点について宮田氏は、「国内の情報を日本語で検索できることです。ローマ字による検索と異なり、同音異義語を区別できるので便利です。企業が研究開発中の製品の商業化などを検討する際には、研究者などの検索に加えて、国内の特許情報の検索が役立ちそうです」という。
企業が新規事業を企画立案したり、自社の技術や製品の用途拡大を検討したりする際にJ-GLOBALを活用すれば、課題解決のヒントが得られそうだ。
例えば、半導体の研究課題を探す場合に、「微生物電池」や「水田」といった異分野のキーワードをうまく組み合わせて検索すれば、異分野の技術を融合する「ひらめき」の手がかりになると見ている。ただしその際には、「利用者が、(的確なキーワードを選べるだけの)高い問題意識を持つことが重要になるでしょう」という。
最後に宮田氏は、J-GLOBALへの今後の期待について以下のように述べる。「検索した時に表示される研究者や文献などの掲載順位や、類似検索で表示される情報を、どのような基準で決めているのでしょうか。それが分かれば、もっと使いやすくなると思います」。さらに、研究者の「ひらめき」を後押しするのであれば、「テキストだけでなく、動画の検索も可能にしてほしい。そうすれば視覚的に情報を把握でき、可能性がより高まるでしょう」と話す。
2009年3月30日に試行版「β版1.0」の提供が始まったJ-GLOBALは、2009年12月15日にリリースされた「β版1.1」で、情報の網羅性を強化した(図2)。具体的には、2003年以降のものだった文献情報と2004年以降のものだった特許情報を、いずれも1993年以降の情報に拡大した。
2010年3月1日にリリースされる予定の「β版1.2」では、WebAPI(Application Program Interface)を公開し、外部のWebサイトとの連携を強化する。JSTは今後も利用者へのヒアリングなどを通じてJ-GLOBALの機能強化を行い、企業の技術者や研究者にとって、より利用価値が高いサービスの実現を目指す計画である。
[2010年2月]
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日本最大級の研究者探索サイト 国内の大学・研究所の20万人を網羅
企業の技術者や研究者が新たなビジネスのタネになる研究テーマなどを探す際に、インターネットを利用するケースが増えている。ネット上には国内外の科学技術に関する有益な情報サービス(研究者情報や文献情報、特許情報など)が数多く存在している。しかし、専門分野のデータベースサービスなどをよく利用する人でも、自分の専門分野以外の有益な情報は知らないことが少なくない。一方で、専門サービスをあまり使わない人は、科学技術情報を探す時にも、「Google」や「Yahoo!」といったネット上の検索サービスを利用することが多いようだ。
こうした状況のなか、ネット上の科学技術情報の探索手段として注目されているのが、2009年3月30日にJSTが運営を開始した「J-GLOBAL」である。J-GLOBALは、研究者や文献、特許、研究課題など9種類の基本情報を登載しており、これらの基本情報を相互につなげるだけでなく、外部のWebサイトとも連携している。特に、研究者情報については国内の大学・研究所に所属する約20万人に及ぶ情報が登録されていることから、J-GLOBALは日本最大級の研究者探索サイトといえる。
「ネット上には膨大な科学技術情報が存在しているので、本当に必要な情報を一般の検索エンジンで探すのは苦労します。そして一般の検索エンジンでは、発表された論文など過去の情報は検索できますが、未来の情報は探せません。私の仕事は、未来の動向を読者に伝えることです。J-GLOBALは国内の研究者の情報が充実しており、取材先などを調べるのに非常に便利だと思います」──。日経BP社 医療局 主任編集委員の宮田満氏は、J-GLOBALの使用感をこのように話す。
宮田氏は現在、約5万人が登録する会員制のe-Mailニュース配信サービス「BTJ/HEADLINE/NEWSメール」や、より深掘りした情報を掲載する紙媒体の「日経バイオテク」などで、国内外のバイオテクノロジーに関連する最新情報を、企業や研究機関、大学などの研究者に向けて発信している。また、バイオ関連の最新情報を網羅したWeb媒体の「Biotechnology Japan」(BTJ)では、1996年の創刊から現在までWebマスターを務めるなど、名実ともにバイオ分野における第一線のジャーナリストである。
その宮田氏は取材先や取材テーマなどを探す時に、米国国立医学図書館の医学・生物文献データベース「PubMed」や、米Google社が提供する学術論文検索エンジン「Google Scholar」などのほか、日本の特許庁のデータベースを利用する機会が多いという。さらに、「約5万人の研究者が登録されているBTJ/HEADLINE/NEWSメールでのやり取りから、最新情報を入手することも少なくありません」と述べる。
研究者や文献・特許などの関連情報を簡単にたどれる類似検索
J-GLOBALに搭載されている9種類の基本情報には、約20万人の研究者情報のほかに、約1600万件の文献情報、約650万件の特許情報、約6万テーマの研究課題、約18万語の科学技術用語、約280万件の化学物質などがある(図1)。これらの基本情報が相互につながっているため、表示された情報のリンクを次々にクリックするだけで関連する情報を簡単に入手できる。
また、JSTが運営する文献検索サービス「JDreamII」や独立行政法人 工業所有権情報研修館が運営する特許電子図書館「IPDL」のほか、「Wikipedia」や宮田氏がよく利用する「PubMed」などのサイトにもリンクしている。例えば、無料のJ-GLOBALを利用して研究課題を選定し、有料の専門データベースを用いて課題解決の情報を入手するといった使い方も可能だ。
こうした情報の連携について宮田氏は、「J-GLOBALは特に、国内の研究者を調べる仕組みがうまくできていると思います。この人と人をつなぐネットワークから、新たなイノベーションが生まれる可能性があります」と話す。例えば、宮田氏が関心を寄せる「微生物電池」のキーワードで検索すると、関連する国内の主な研究者の一覧が表示された。「私が知っている研究者は、すべて含まれていました。的確な情報入手に活用できそうです」(宮田氏)という。
また宮田氏は、新たな取材テーマを思いついた時に関連する文献を探したり、文献を読んでその原本を探したりすることも多いという。「そうした時に便利なのが、J-GLOBALの類似検索機能です。類似する研究者や文献、特許、研究課題などを芋づる式に検索でき、関連情報を調べられます」と、使い勝手の良さを説明する。類似の研究課題の中には重要な情報が含まれることもあり、類似検索で情報入手の幅を広げることができると見ている。
異分野のキーワードを組み合わせて「ひらめき」の手がかりに
海外の検索エンジンやデータベースと比べたJ-GLOBALの利点について宮田氏は、「国内の情報を日本語で検索できることです。ローマ字による検索と異なり、同音異義語を区別できるので便利です。企業が研究開発中の製品の商業化などを検討する際には、研究者などの検索に加えて、国内の特許情報の検索が役立ちそうです」という。
企業が新規事業を企画立案したり、自社の技術や製品の用途拡大を検討したりする際にJ-GLOBALを活用すれば、課題解決のヒントが得られそうだ。
例えば、半導体の研究課題を探す場合に、「微生物電池」や「水田」といった異分野のキーワードをうまく組み合わせて検索すれば、異分野の技術を融合する「ひらめき」の手がかりになると見ている。ただしその際には、「利用者が、(的確なキーワードを選べるだけの)高い問題意識を持つことが重要になるでしょう」という。
最後に宮田氏は、J-GLOBALへの今後の期待について以下のように述べる。「検索した時に表示される研究者や文献などの掲載順位や、類似検索で表示される情報を、どのような基準で決めているのでしょうか。それが分かれば、もっと使いやすくなると思います」。さらに、研究者の「ひらめき」を後押しするのであれば、「テキストだけでなく、動画の検索も可能にしてほしい。そうすれば視覚的に情報を把握でき、可能性がより高まるでしょう」と話す。
2009年3月30日に試行版「β版1.0」の提供が始まったJ-GLOBALは、2009年12月15日にリリースされた「β版1.1」で、情報の網羅性を強化した(図2)。具体的には、2003年以降のものだった文献情報と2004年以降のものだった特許情報を、いずれも1993年以降の情報に拡大した。
2010年3月1日にリリースされる予定の「β版1.2」では、WebAPI(Application Program Interface)を公開し、外部のWebサイトとの連携を強化する。JSTは今後も利用者へのヒアリングなどを通じてJ-GLOBALの機能強化を行い、企業の技術者や研究者にとって、より利用価値が高いサービスの実現を目指す計画である。
[2010年2月]
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