抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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北太平洋亜寒帯域東部に位置するアラスカ湾では,その北西岸を南西に流れるアラスカンストリーム(AS)に中規模高気圧性渦がしばしば観測される(Crawford 2000;2002)。これらの高気圧性渦は,渦自身の沖への伝播と渦外縁における移流などによって,高温低塩かつ栄養塩・プランクトン・微量元素(鉄など)を豊富に含む沿岸水をアラスカ循環中心部へ輸送する(Whitney & Robert 2002;Crawford et al.2005; Johnson et al.2005)。アラスカ循環中心部は栄養塩濃度に比べて生物生産が少なく(HNLC海域),渦による鉄の供給が生物生産に重要な役割を果たしていると示唆されている(Johnson et al.2005)。アラスカ湾で形成された高気圧性渦の一部はアラスカ湾を出てASに沿って西進するが(Crawford 2000),その経路や構造は十分に理解されておらず,熱淡水輸送や生物生産への影響は未知となっていた。そこで筆者らは,衛星海面高度計データとArgoデータを用いて,ASを西進する高気圧性渦の物理的性質を調べた(2008年度春季大会講演番号133)。その結果,アラスカ半島とアリューシャン列島の南岸で高気圧性渦(AS渦)が形成され,その大部分が180°を超えて西部亜寒帯循環に到達,西部亜寒帯循環の水温・塩分場に影響を与えていることが示唆された。本研究では,衛星海面クロロフィルa(Chl-a)データを用いることにより,AS渦が北太平洋中西部亜寒帯域の生物生産場に与える影響を検討したので,その結果を報告する。(著者抄録)