抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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本研究の目的は,オープンソースソフトウェア(OSS)開発プロジェクト内における情報交換のタイムラグの実態を解明し,グローバル環境下におけるメーリングリストを用いた情報交換の所要時間を短縮化するための指針を得ることである。OSS開発プロジェクトの特徴の1つは,世界中に点在する開発者が共同開発を行うという分散開発の形態をとることである。そのため,開発者同士の情報交換は主に電子メールを代表とする非対面・非同期のコミュニケーション手段が用いられている。しかし,グローバル環境下では各開発者の時差帯の違いから開発者間の情報交換にタイムラグが発生し,リアルタイムな情報交換が困難であることが推察される。そこで,本論文では,このタイムラグに関する仮説を実験的に検証するため,12件の大規模なOSS開発プロジェクトを分析対象とし,それらをボランティア型,企業混合型の2つに分類して分析を行った。その結果,以下の知見がえられた。1)ボランティア型OSS開発プロジェクトでは,返信地域が深夜から早朝となる時間帯にメッセージを送信すると,日中に比べて開発者間の情報交換にタイムラグが発生する可能性が高い。時差の影響を受けずに情報交換を行うことができる時間帯は,米大陸地域では10時から12時頃,欧・アフリカ地域では18時頃であることがわかった。2)企業混合型OSS開発プロジェクトでは,OSS開発を仕事とする企業の開発者が多く存在するため,返信地域が夕方から早朝となる時間帯にメッセージを送信すると,日中に比べて開発者間の情報交換にタイムラグが発生する可能性が高い。時差の影響を受けずに情報交換を行うことができる時間帯は,米大陸地域では9時から12時頃,欧・アフリカ地域では15時から18時頃であることがわかった。本分析の結果によって,1日1時間程度しか開発に従事できない開発者がメールの送信時刻を工夫し,この限られた時間をより効率的に利用できるようになると期待できる。