抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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次期幼稚園教育要領は2018年度実施に向け改訂作業が進んでおり,次期幼稚園教育要領は,幼児期の終わりまでに育ってほしい姿の整理イメージの一つとして「自然との関わり・生命尊重」をあげている。ここでは,「自然の大きさや不思議さなどを感じ,好奇心や探究心を持って,科学的な視点や自然への愛情や畏敬の念などをもつようになる」ことを目標としている。しかし,わが国の幼児教育では,動植物に対する愛護の精神を養うといった情緒的な側面を重視し,これと不可分な関係にある動植物に対する正しい知識を獲得させることは軽視されがちである。一方,米国の科学教育では,は「科学知識」の習得に加え,「思考や探究の方法」を習得することが最終目的とされている。科学における思考の方法はサイエンス・プロセス・スキル(science process skills)と呼ばれ,幼児は科学的な活動をする際に「推論」「分類」「仮説立て」「実験の実行」等のサイエンス・プロセス・スキルを用いて思考すると考えられている。本研究では,保育者の科学的な視点について米国科学教育の基礎的なサイエンス・プロセス・スキルの観点に基づき明らかにすることを目的とした。その結果,次の3点が明らかとなった;(1)保育者が最も多く働きかけているのは伝達スキルで,保育者が最も少なく働きかけているのは予測スキルであった。(2)保育者の勤務する保育施設の違いによって,サイエンス・プロセス・スキルに関する幼児への働きかけに統計的な有意差は見られなかった。(3)保育者の世代の違いによってサイエンス・プロセス・スキルに関する幼児への働きかけに統計的な有意差が見られ,50代の保育者は伝達スキルを重視した幼児への働きかけを行っていた。幼稚園教育要領の領域環境における「ねらい」や「内容」の詳細はまだ明らかにされていないが,保育者が科学的な視点をもって幼児に接することを目指し,ひいては幼児がサイエンス・プロセス・スキルを習得できる改訂であることを期待している。今後の課題は,基礎的なサイエンス・プロセス・スキルを重視した保育活動の実践によって,幼児の変容を明らかにすることである。また,幼児の自然科学の学びに関する保育者の考えについて面接調査等を実施することも必要である。