抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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日本のエネルギーミックスは,1970年代の石油危機後から東日本大震災直前まで,政策的に化石エネルギー源(石炭,石油,天然ガス)から非化石エネルギー源へのシフトが推進されてきた。1970年度の化石エネルギー源は全体の93%を占めていたが,おもに原子力依存度の上昇により,2010年度には84%まで低下した。しかし,東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故後の2013年度には原子力依存度が0.4%となり,再生可能エネルギーの比率は2.1%に上昇したものの,化石エネルギー源が原子力依存度の低下分をほぼ代替する格好で増加し,化石エネルギー源の比率は94.5%まで上昇している。2015年時点で,日本政府は化石エネルギー源の比率を2030年度に76%程度まで低減させる見通しを掲げているが,その実現性に関しては,2016年2月時点で約800の新規参入者の特定規模電気事業者(PPS:Power Producer and Supplier)における今後の再生可能エネルギー事業成長の成否によって大きく左右されると考えられる。そこで本研究では,今後の日本の電気事業において,再生可能エネルギー利用普及に重要な役割を担う新規参入者の特定規模電気事業者の実態(2016年2月時点)に焦点を当て,その事業実態の現状を概観し,再生可能エネルギー利用普及に係る政策課題の考察を試みる。2012年7月から開始された再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)については,価格設定方法(資源価格変動の影響を含む)と国民負担(再生可能エネルギー発電促進賦課金等)の経済合理性が再検証される必要がある。電力事業サービスという公共性と市場競争を両立させるには,一定の外部性を想定し,「市場の失敗」及び「政府の失敗」によって生じる可能性のある埋没費用(sunk cost)を制御できる最低限の経済的規制の検討が必要である。2016年4月以降の電力小売市場の全面自由化のなかで,FITに制度のレジリエンス(resilience)が保持されているかについても検討される必要がある。(著者抄録)