抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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中国では,所得上昇に伴い牛乳・乳製品の需要が高まっている。内モンゴルのモンゴル人にとって,牛乳・乳製品は昔から主要な栄養源としてだけでなく神聖な食料資源とみなされており,酪農は内モンゴルの主要産業であった。しかし現在,草地の過剰利用により牧畜生産飼料基盤である草原が劣化と砂漠化に直面し,その対策として酪農業では主に行われてきた放牧が2004年に禁止された。その結果,自然草地を利用しないため農家の飼料費用は高騰し,収益が減少した。一方,消費量の増加に伴い牛乳の生産量が顕著に伸びているが,生産費用削減を目的としたメラミン事件の発生により,消費者の安心,安全に対する懸念が生じている。消費者の牛乳と乳製品の選好性を把握し,酪農生産の持続可能性,収益性,需要に見合う供給量を確保するためには,まず消費者が何を最も重要視しているかを明らかにする必要がある。そこで本研究では,内モンゴル自治区における牛乳消費者の購入意識調査を行い,消費者の世帯属性別に牛乳購買選択行動の違いを検討し,高付加価値牛乳の潜在需要を明らかにした。また禁牧,放牧,高付加価値酪農業の収益性・生産性を比較した。第一にホルチン地域マンハンの都市部において牛乳購入時の意識調査を行った。第二に禁牧と放牧,さらに日本の一部で行われているような濃厚飼料に全く頼らない高付加価値農業を内モンゴルで実施した場合について,酪農経営比較を行った。アンケート調査の結果,牛乳を買う時に最も重要視しているものは鮮度であった。消費者が考えている安全な牛乳とは,新鮮で添加物のない牛乳であり,自然で安全な牛乳の価格に対する選好では92%の人が「高価でも買う」と返答し,年齢の高い人ほど高価でも買う傾向があった。また酪農経営比較では,2004年以前の飼料価格では禁牧の収益は放牧より同等以上であったが,現在では飼料価格の高騰により禁牧の収益が悪化していた。現状の禁牧を放牧に戻しても経営を改善することが可能であることが示唆された。また濃厚飼料に全く頼らない高付加価値農業は,内モンゴルでも実施可能であり,収益はさらに上がると期待された。アンケート調査によるとその需要もあり,それほど高価で売らなくても採算が取れることが示唆された。(著者抄録)