抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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燃料と化学物質の原料として非食用バイオマスを用いることは,温室効果ガス(GHG)の削減をもたらし,食品競争を引き起こさないことから注目されている。しかし,原料としての非食用バイオマスの利用は,特に生産をスケールアップするのが困難な日本において食用バイオマスよりも高い生産コストをもたらすという問題がある。国内の製糖工場で発生する非食用バイオマスであるバガスはボイラ燃料としてしか使用できないため過剰で,余剰バガスの使用は製糖工場の課題である。さらに,発酵用原料の糖蜜の価値は低下しており,糖蜜の価値の向上も国内の製糖工場の課題である。これらの課題を解決するために,未利用のバガスと糖蜜からエタノールを製造し,同時に高付加価値製品であるオリゴ糖と多価フェノールを製造することにより収益性を向上させるビジネスモデルの技術を開発した。環境省の委託によりこの技術開発・実証プロジェクトを実施した。このプロジェクトモデルの収益性を改善するためには,バガスオリゴ糖画分とバガス多価フェノール画分の価値を改善することが重要である。したがって,本論文ではバガスオリゴ糖画分のプレバイオティクス効果とバガス多価フェノール画分の抗酸化活性を検討した。バガスオリゴ糖画分の分析から,分子量200以上の成分が75%を占めることが明らかになり,それが多くの高分子量成分を含むことを確認した。これらの成分は主にキシロースと水溶性食物繊維から成るオリゴ糖であることが示された。したがって,ブタ糞便を用いたプレバイオティクス試験を行ったとき,BifidobacteriumとLactobacillusの数は対照群と比較して増加した。この結果はバガスオリゴ類画分が腸環境を改善することを示す。次に,バガス多価フェノール画分の総多価フェノール濃度を分析した。その結果,その濃度は60.8%-固体(カテキン換算濃度)であった。バガス多価フェノール画分の抗酸化活性をその有用性の評価としてH-ORAC法により測定した。それは16508μmol TE/gであった。さらに,価格当たりの抗酸化活性について他の多価フェノール生成物と比較したところ,バガス多価フェノール画分は最高値を示したリンゴポリフェノールとほとんど同じ値を示した。従って,バガス多価フェノール画分は抗酸化剤として価格競争力を持つと考えられる。このプロジェクトのモデル工場として生和糖業(株)の喜界工場(余剰バガス2800t/年,糖蜜2800t/年)を考えると,バガスオリゴ糖画分とバガス多価フェノール画分のすべての製品をこれらの結果に基づいた競争価格で販売する場合,エタノールの生産コストは輸入価格の73円/Lのよりも有意に低くなった。また,このビジネスモデルは経済的に自立できた。今後,バガスオリゴ糖画分とバガス多価フェノール画分の有用な効果に関する研究を続け,この技術を国内だけでなく世界でも普及させるために,それらの価値を高めたい。(翻訳著者抄録)