抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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モザイク荷電(CM)膜は陽イオン交換層(N層)と陰イオン交換層(P層)が膜を貫通した構造を有するため,濃度勾配や圧力勾配を駆動力として,陽イオンと陰イオンを促進輸送的に透過する性質を有する。そのため,圧透析系で,海水やかん水を淡水化することが可能であり,逆浸透膜法より低エネルギー・低コストでの淡水化が期待できる。以前の研究において,モザイク荷電膜を用いた圧透析による脱塩が可能であることを確認した。そこで本研究では機械的強度の向上を目指してCM膜に使用する支持多孔層構造の最適化を行った。まずPVA,カチオン性高分子電解質であるPoly(diallyl dimethyl-ammonium chloride)(PDADMAC)とアニオン性高分子電解質であるPoly(vinyl alcohol-co-2-acrylamido-2-methylpropane sulfonic acid)(AP-2)を膜マトリクスとするPVA系CM膜を種々の支持体上にポリマー押出法により作製した。そして得られた膜の架橋条件を変えることで様々な膜構造を有するPVA系CM膜を作製した。その後,膜構造の観察,及び膜電位測定から正,負荷電層のチャージバランスなどの基礎特性評価を行った。また,低分子の電解質及び非電解質を含む溶液を用いて拡散透析試験を行い,電解質と非電解質に対する電解質選択性の評価を行った。本研究で作製したPVA系CM膜の顕微鏡観察から,押出法により厚みが約30μmの荷電層が多孔性支持体上に形成され,その正荷電層と負荷電層はそれぞれ約300μmと400~500μm幅であり,陽イオン交換領域の幅が陰イオン交換領域より大きくなっていた。その結果,膜電位の結果と合わせて,正荷電層と負荷電層のチャージバランスが負に偏った構造を有することが判明した。作製したCM膜の機械的強度は申請者が以前作製した積層法PVA系CM膜と比較して高く,さらにその機械的強度は支持体を有する市販イオン交換膜よりも高い値を示した。支持体にプレス処理ポリエステル紙を用いたCM膜は,高いKCl選択透過性が得られ,最大でDesaltonの約13倍高い値を示した。これは支持体であるプレス処理ポリエステル紙は,未プレス処理ポリエステル紙よりも空隙率が低くKClの透過も抑制するが,それ以上にスクロースの透過を抑制するためと考えられる。また荷電層の膨潤が支持体繊維により抑えられるため,荷電密度が高くなり,正,負荷電層の対イオン選択性が高くなったと考えられる。以上の結果より,今後はドメイン幅の減少や,チャージバランスの最適化,高分子電解質にブロック共重合体を用いて膜荷電密度を高めることで,圧透析に耐えられる機械的強度を有し,かつ高電解質流束及び高電解質選択透過性有するCM膜の作製が期待できる。(著者抄録)