抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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日本の伝統的発酵食品である味噌には,発酵によって生じる代謝産物が豊富に含まれており,それらが味噌の保健機能にも深くかかわると考えられている.地域によって原材料や製法が微妙に変化する味噌作りでは,それぞれの製法のちょっとした違いが発酵に関わる微生物の種類や機能に影響する結果,味噌に含まれる成分組成に差が生まれて,それぞれの地域性を生み出してきたと考えられる.一般に味噌は,米味噌,麦味噌,豆味噌,合わせみそなど,用いる原材料である穀類によって大別されており,それぞれ風味や機能性に特徴があって好まれる地域も異なる.しかしながらもう一つの主要な原材料である塩に関しては,長らく専売制度下で標準的な食塩の使用が続いた影響のためか,その種類と味噌作りとの関係性はあまり深く研究がなされていない.そこで本研究では塩の違いに着目し,製塩法が異なる(したがって成分組成も異なる)塩が味噌発酵におよぼす影響を調べることを目的とした.具体的には,塩化マグネシウムを主成分とする「にがり」を含む海塩と,含まない海塩を用いて試験的に製造した味噌について,そこに含まれる代謝産物の網羅的解析を行った.ここでは,「にがり」を除去しない海塩として山口県光市で採取した海底湧海水から作った海底湧海水塩,および「にがり」を除去して製造した市販の海水塩,それらを1:1で混合した塩を用いて仕込んだ味噌について,発酵開始111日および181日目に味噌をサンプリングした.各味噌の抽出物に含まれる代謝産物をLC-MSによって分析し,得られたLC-MSデータの多変量解析を行った.この結果,用いた海塩の種類によって代謝産物プロファイルは大きく異なり,意外なことに1:1の混合塩で作った味噌の代謝産物プロファイルで最も大きな違いが認められた.以上の結果は,味噌に含まれる麹菌や,酵母,乳酸菌などの微生物の生育には至適なNaClおよび微量ミネラル成分のバランスが存在し,そのバランスが発酵に影響することで代謝産物のプロファイルが変わってくることを強く示唆した.(著者抄録)