抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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アイスクリームの内部構造は,主に気泡,氷結晶,乳製品で構成され,これらは,アイクリームの最終品質に大きな影響与える.アイスクリームの内部構造計測は,光学顕微鏡,電子顕微鏡,X線CTなどがあるが,これらの計測には,凍結置換法,凍結固定法,凍結乾燥法などによる試料の前処理が必要で,とくに,電子顕微鏡,X線CT計測には,前処理として試料の凍結乾燥が行われる.このため,アイスクリーム内の氷結晶が昇華し,空隙として残り,元来の気泡との区別が困難である.本研究の目的は,極低温ミクロトームスペクトルイメージングシステム(Cryogenic Microtome Spectral Imaging System, CMtSIS)とX線CTを用い,アイスクリームの内部構造を計測することにある.具体的には,1)アイスクリームの6種類オーバーラン(Overrun: OR)をコントロール可能なフリーザーを用い,4種類(Very Low, Low, Medium, High)のアイスクリームを製造し,重量を基準にしたオーバーラン(OR)を測定した.2)CMtSISにより自動位置きめにより得られた結合画像から気泡の表面積を求め,CMtSISの切削厚を掛け体積を求めた.この気泡の体積を基準にした3種類(Very Low, Medium, High)のオーバーラン(ORVc)を算出した.3)CMtSISにより得られた連続2次元断面画像を用い,気泡,氷結晶,乳製品の3次元像を構築し,気泡と氷結晶の体積を算出し,さらに,気泡の3次元像の体積を基準にしたVery Lowのオーバーラン(ORVc-3D)を算出した.4)X線CTにより得られた画像から気泡の表面積を求め,X線CTの3次元画像構築に伴う画素の厚さを掛け気泡の体積を求めた.この気泡の体積を基準にした2種類(Low, High)のオーバーラン(ORVx)を算出した.CMtSISは,試料を切削するミクロトーム部,自動XYステージ,分光観察部で構成される.ミクロトーム部の熱交換器は液体窒素を冷媒とし,室温から-100°Cまで,切削刃は,熱交換器を通った液体窒素により-50°Cで制御される.X線CTは,大型放射光施設SPring-8のビームライン(BL14B2)で,X線エネルギーは12.4 keVである.試料周辺は,液体窒素を吹き付け,約-30°Cで制御される.結果は以下である.1)アイスクリームの重量を基準にしたORの平均値は,Very Lowが11.5%, Lowが22.7%, Mediumが44.3%, Highが73.8%であった.2)CMtSISの自動位置きめにより得られた36枚の結合画像から,気泡,氷結晶,乳製品を識別した.また,結合画像の実寸法は,1164×924μm
2で,気泡のミクロ(相当円直径:0.9μm
2)からマクロ面積(相当円直径:48362.0μm
2)までの計測が可能になった.3)CMtSISによるORVcの平均値は,Very Lowが10.5%, Mediumが42.8%, Highが77.7%で,この際,ORはそれぞれ11.5%, 44.3% , 73.8%であった.4)CMtSISによるORVc-3Dの平均値は,14.8%で,この際,ORは12.7%であった.5)X線CTによるORVxの平均値は,Lowが21.7%,Highが71.3%で,この際,ORはそれぞれ22.7%,73.8%であった.本研究の手法は,従来のような凍結乾燥,凍結置換,材料構成成分の染色などの試料の前処理が不要となり,かつ,アイスクリームの内部構造を直接に計測できる大きな特色がある.(著者抄録)