抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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近年,石筍の
14Cは,年代測定のツールとしてよりも,大気の
14C較正曲線(IntCal
14C曲線)と比較することにより,過去の水循環を知るための有効なプロキシとして注目を浴びている。石筍中の
14Cは,石灰岩母岩に由来する
14C-free(dead)炭素の混入によって希釈されており,この
14C-free炭素の寄与率(DCF:Dead Carbon Fraction)は,気温の変化,降水量,滴下水の水系,洞内の換気状態,土壌大気のpCO
2などの影響を受けて変化する。Minami et al.(2015)は,静岡県の竜ヶ岩洞の滴下水の
14Cを測定し,滴下地点によって,滴下速度,Mg/Ca比,
14C濃度が異なること,竜ヶ岩洞の滴下水は,水の通り道があり,降雨に反応する性質をもっていること,滴下水中の
14Cは降水量と相関しており,降水量が多いと,滴下水中の
14Cが高く(DCFが小さく)なる傾向があることを明らかにした。Bahama石筍,Hulu Cave石筍,Heshang Cave石筍の結果も踏まえ,滴下水のDCFが小さい場合は,気候変動によってDCFがあまり変動しないため,DCFが一定として石筍の
14C年代測定が可能であると予想できる。一方,DCFが大きい場合は,気候変動(降水量)の影響を受けてDCFの値が変化するため,正しい年代測定が難しい一方,IntCal
14C曲線と比較することにより,古環境・古気候変動の情報を得るための有効な手段になると考えられる。(著者抄録)